理科教材ワンポイント講座
第５学年
「　もののとけ方　」
「とける」ということを理解するのは子どもにとって難しい。
「 とけるとはどういうことか」を 単元を通して指導者が意識し、
追究させていくことが、本単元最大の｢ワンポイント｣！
１．この単元で何を学習するのか
 
�� 指導要領より（抜粋）
Ｂ　物質とエネルギー（１）
 
　　物を水に溶かし、水の温度や量による溶け方の違いを調べ、物の溶け方の規則性についての考えを持つようにする。
 　　ア　物が水に溶ける量には限度があること。
 　　イ　物が水に溶ける量は水の量や温度、溶ける物によって違うこと。
　 　　　また、この性質を利用して、溶けている物を取り出すことができること。
 　　ウ　物が水に溶けても、水と物とを合わせた重さは変わらないこと。
 
�� 単元の目標
　ものを水に溶かし、その変化を水の温度や量などの条件に目を向けながら調べたり、ものを水に溶かしたときの全体の重さを
調べたりする活動を通して、ものが水に溶けるときの規則性についての見方や考え方をもつようにするとともに、
ものが水に溶ける現象の規則性を興味・関心をもって計画的に追究する能力を育てる。
 
２．単元を構成するにあたって
 
�� 子供たちは・・・、
  ○ 生活の中で「とける」という言葉はよく使われるので、何となく分かっている。しかし、本単元の「水溶液」につながる「溶ける」については正しく理解されていない。
 
  ・砂糖が水に「とける」。 ・アイスクリームが「とける」。
  ・インスタントコーヒーが「とける」。 ・味噌が「とける」。
  ○ 「とける」ということを科学的に追究する経験は皆無であり、定義の理解はできていない。
 
  ・「とける」と「まざる」の違い。
  ○ 「目に見えなくなる」現象であることから、推論の力が要求され、科学的追究が難しい。
 
  ・とけたら「なくなる」の？ ・「味に変わる」の？
 
�� 何が分かればよいのか。
 
  ○ 「水にとける」ということの意味。
 
  �� 溶かす粒（溶質）は見えなくなること。 （透明）
  �� 溶けた水（水溶液）は透き通っていること。 （透明）
    　※有色でも良い。  
  �� 溶けたもの（溶質）は、水（溶媒）全体に広がっていること。 （均一性）
    　※（溶媒が蒸発しない限り）時間が経っても溶質と溶媒は分かれない。
  ○ 「水にとける」ことの規則性。
 
  �� ものが水に溶けても、水とものとを合わせた重さは変わらないこと。 （質量保存）
  �� ものが水に溶ける量には限度があること。 （飽和溶液）
  �� ものが溶ける量は、水の量、水の温度、溶けるものによって違いがあること。 （溶解度）
  �� 蒸発させたり、冷やしたりして、溶けたものが取り出せること。 （析出）
  ○ 実験器具の使い方。
 
  �� 上皿てんびんによる測定。
  �� メスシリンダーによる測定。
  �� ろ過。
 
�� 学びの内容と順序は
 
段階 活動 学習内容
単元導入 もののとけ方 【「とける」の概念理解、課題設定】
第　１　次 水にとけたもののゆくえ 【質量保存の法則の追究と理解】
第　２　次 ものが水にとける量�� 【飽和水溶液の追究と理解】
ものが水にとける量�� 【溶解度曲線の追究と理解】
第　３　次 とかしたものを取り出すには 【析出の追究と理解】
補充と発展 水よう液の不思議をさぐる 【学びの定着、学びの深化】
 
�� 単元を構成する上で大切にしたいこと
 
○ 「とける」ということに関心を持たせる。 【単元導入】
  　・「シュリーレン現象」からの導入。
  　　※「とける」ことについて認識を誤る可能性があるので注意。
  　　　　→『底に沈んだコーヒーシュガーの実験』。
○ 確かな知識を習得する。 【単元全体】
  　・「水に溶ける」ということの意味。　　→色々なものを水に溶かす実験。
  　・「水に溶ける」ということの規則性。
○ 実験器具操作の技能を修得させる。 【単元全体】
  　・上皿てんびんの使い方。（復習）
  　・メスシリンダーの使い方。
  　・ろ過の仕方。
○ 科学的追究の思考力（と技能）を育てる。 【単元全体】
  　・「溶ける」ことの規則性を見出す学習。
  　　▼各実験を「溶ける」ということの追究につなげていく。
  　　▼推論することができるか？　→『分子モデル（イメージ図）の活用』。
  　　▼正しく記録し、まとめられるか。
○ 学習したことを確かめさせる。（確かなものにする。） 【補充と発展】
  　・もの作り（結晶作り）を通して。
  　・個人研究を通して。
  　・生活との関連を図って。
 
３．どのように単元を流すか
 
【単元導入　水がものにとけるということ　２時間→３時間】
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題 『ものが水に溶けるときの様子を詳しく調べてみよう』
 
活　　動 ○ シュリーレン現象の観察。
  ○ 色々な物を溶かそうとする実験。
  ○ 「 溶けるとは？」についての話し合い。
 
評価基準 関心�� ものが水に溶ける様子に興味を持ち、もののとけ方の規則性を調べようとする。
 
  思考�� もののとけ方やとけたもののゆくえなどを予想することができる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ 「とける」･･･ 「粒が見えなくなる」。
  「液が透き通っている」
  「水全体に広がっている」
  「時間が経っても水と分かれない」
　○ このような液を水溶液という
【他の課題例】
『水にとけるとはどういうことだろう』
『どんなものが水にとけるだろう』
 
○ 「混ざる」と「溶ける」の違いを明確にする
 
○ 「コロイド溶液」については、ここで扱わずに発展で扱っても良い。
 
○ 「分子モデル図（イメージ図）にして考える方法もある。
 
○ 「水よう液」という言葉を指導する。
 
○ 「溶ける」ということをより深めていくための次時からの学習にしていきたい。
 
【第１次　水にとけたもののゆくえ　２時間】
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題 『水にとけたものは、どうなったのだろうか』
 
活　　動 ○ とけたもののゆくえについての話し合い。（予想）
  ○ 実験１＜水よう液の重さ＞
  ○ 結果についての話し合い。
 
評価基準 技能�� てんびんを使い、 水溶液の重さを調べ、記録することができる。
  知識�� ものが水に溶けても、ものと水を合わせた重さは変わらないことが分かる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ ものが水にとけても、ものと水を合わせた重さは変わらないこと。
（とけたものは、見えなくなったけど、なくなったのではないこと。）
○ 仮説をもって話し合わせる。
○ 水溶液をこぼさないように注意させる。
高さのある容器を使うほうがよい。
フィルムケースのような蓋付きの容器を使い、降って溶かすという方法もあるが･･･。
 
【第２次　ものが水に溶ける量　５時間】
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題�� 『ものが水に溶ける量には、限りがあるのだろうか』
 
活　　動 ○ 溶ける限度について話し合う。（予想）
  ○ メスシリンダーの操作練習。
  ○ 実験２　＜食塩やミョウバンがとける量＞
  ○ 結果についての話し合い。
 
評価基準 技能�� メスシリンダーを使い、水の量を変えてものが溶ける量を調べ、記録することができる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ とける量には限度があること。
○ とかすものによってとける量は違うこと。
○ 水の量を増やすととける量も増えること。
○ 話し合いの中で、生活経験から「温めたらもっと溶ける」という意見が出ることが予想される。その意見は次時につなげる。
○ とかすもの（溶質）は、「重さ」で測り取る方法でもよい。「かさ」の場合、実験はしやすい分、計量スプーンを使うなど、正確さを大切に。
○ 課題��の後で、課題�△塙腓錣擦討泙箸瓩鬚靴討發茲ぁ�
課　　題�� 『水の量を変えずに、もっとたくさん溶かすにはどうしたらよいだろう』
 
活　　動 ○ 方法についての話し合い。
  ○ 実験３　＜水の温度ととける量＞
  ○ 実験についての話し合い。
 
評価基準 技能�� 水の温度を変えてものの溶け方の規則性を調べ記録し、まとめることができる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ 水の温度を上げると、水に溶ける量も増えること。
○ とかすものによって、とける量の増え方は違うこと。
○ 火傷には細心の注意を！
  ・ 水温は60℃（湯煎用は70℃）以上に上げない。
  ・ 加熱しても、三脚の上で混ぜない。
  ・ ガラス棒や温度計をビーカーの中に立てておかない。等
 
○ 「たくさん溶かそう」というだけでなく、
それぞれの水温で溶ける限度があることも
意識させる。
 
○ できた水溶液はラップをかけて保管しておき、第３次で使う。
 
○ 課題��の後で、課題�，塙腓錣擦討泙箸瓩鬚靴討發茲ぁ�
課　　題�� 『水の温度（量）を変えると、ミョウバンや食塩のとける量は、それぞれどうなっただろうか』
 
活　　動 ○ とける量についての話し合い。
 
評価基準 思考�� ものが水に溶ける量を、水の量や水の温度と関係付けて考えることができる。
 
  知識�� ものが水に溶ける量は、水の量や水の温度、溶けるものによって違いがあることが分かる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ とける量には限度があること。
○ とかすものによってとける量は違うこと。
○ 水の温度を上げると、水にとける量も増えること。
（水の量を増やすととける量も増えること。）
○ とかすものによって、とける量の増え方は違うこと。
○ グラフ化を取り入れたい。
 
○ 「水の温度」に焦点を当てるが、水の量との関係もおさえたい。
 
 
【第３次　とかしたものを取り出すには　３時間】
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題�� 『水溶液から、溶かしたものを取り出すには、どうしたらよいだろうか』
 
活　　動 ○ 方法についての話し合い。
  ○ ろ過の操作練習。
  ○ 実験４　＜とかしたものを取り出すには＞
  ○ 結果についての話し合い。
 
評価基準 技能�� ろ過するなどして、水溶液に溶けているものを取り出すことができる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ 水溶液を冷やすと、その温度でとけきれなくなった分、とけていたものを取り出すことができる。
○ 水溶液から水を蒸発させても、とけていたものを取り出すことができる。
○ 実験�△悩遒辰真緲榔佞魎兒，垢襦�
 
○ 析出の方法として「冷却」と「蒸発」の大きく２つの意見が予想される。
 
○ 「蒸発」も実験するとよいが、熱して完全に蒸発させると、「焼きミョウバン」となって、大きな結晶はできない。
 
○ 「蒸発」で結晶を見るなら、自然蒸発がよい。
（スライドガラスに数的水溶液を落としておくなどして。）
 
課　　題�� 『ミョウバンの飾り（結晶）を作ろう』
 
活　　動 ○ 作り方について話し合い。
  ○ ミョウバンの飾り（結晶）の製作。
 
評価基準 技能�� 水溶液を冷やすなどして、ミョウバンの飾りを作ることができる。
  知識�� 水溶液の性質を利用して、水にとけているものを取り出すことができる。
 
学習（まとめ）のポイント
○ 水よう液の性質を利用すると、とけたものを大きな粒（結晶）にして取り出すことができる。
○ 結晶という言葉を教えてもよいのでは、と思うのですが･･･。
（教えなければならない用語ではない。）
 
○ 作り方についての話し合いは、深入りする必要は無い。教科書を読んだり、指導者が教えたりしてもよい。
 
 
 
 
○ あえて「まとめ」をする必要はないのですが。
 
 
【補充と発展�　，發里里箸永�】
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題
　　(補充)		 『食塩の飾り（大きな粒・結晶）を作ってみよう』
 
活　　動 ○ 取り出し方の話し合い
  ○ 食塩の飾り（結晶）の製作。
  ○ 調べたことの話し合い。
 
評価基準 思考�△諒篏�
  知識��の補充
 
課　　題
　　(発展)		 『海水から食塩を取り出してみよう』
 
活　　動 ○ 取り出し方の話し合い。
  ○ 食塩を取り出す活動。
  ○ 海水に溶けているものの調べ学習。
  ○ 調べたことの話し合い。
 
評価基準 思考�△糧�展
  知識�↓�の発展
 
○ 「補充」と「発展」は選択させる。
 
○ 食塩は、
「水を減らす方法（蒸発）」が適しているが、「温度を下げる方法」を試してもよい。
 
 
 
 
 
 
 
○ パソコンや図書室の利用。
 
 
 
 
 
【補充と発展�◆／緲榔佞里劼澆弔鬚気阿襦�
課題、活動、まとめなど 留意点　など
課　　題 『水溶液の不思議の中から、調べたいテーマを決めて、調べてみよう』
 
テーマと活動（例）
 
  ○ 濃くなった水溶液の性質を調べよう。
  　　→　食塩水を濃くしていき、卵を浮かべる実験。
 
  ○ 海水に溶けているものを調べよう。
  　　→　海水から食塩を取り出す実験＆調べ学習。
 
  ○ 食塩の飾り（結晶）を作ろう。
  　　→　モールを使った飾りの製作。
  　　　　　　　ｏｒ　顕微鏡による結晶の成長の観察。
 
  ○ 身の回りのいろいろなものを溶かしてみよう。
  　　→　いろいろなもののとけ方の実験観察。
 
評価基準 思考�，糧�展
 
 
 
 
 
○ 卵の用意。
 
 
○ 蒸発による析出。
○ パソコンや図書室の利用。
 
 
 
 
○ コロイド溶液の解説をしてもよい。