理科教材ワンポイント講座　６年　水よう液の性質

① 指導要領より（抜粋）

Ｂ　物質とエネルギー（１）

いろいろな水溶液を使い、その性質や金属を変化させる様子を調べ水溶液の性質や働きについての考えをもつようにする。
	ア　水溶液には、酸性、アルカリ性及び中性のものがあること。
	イ　水溶液には、気体が溶けているものがあること。
	ウ　水溶液には、金属を変化させるものがあること。

② 単元の目標

　水溶液に興味をもち、金属との反応や指示薬による仲間分け、および水溶液に溶けているものを調べる活動を通して、

水溶液の性質やはたらきについての見方や考え方をもつようにするとともに、水溶液の性質やはたらきを多面的に追究

する能力や、日常生活に見られる水溶液を見直す態度を育てる。

２．単元を構成するにあたって

① 子供たちは・・・、

○

５年生の「もののとけ方」の単元で、水にものが溶けているものが「水溶液」ということを学習している。

○

「水溶液に溶けているもの」は、固体であると考える児童が多いだろう。

○

「酸性雨」という言葉を目にしたり、その被害についての恐ろしさについても知っていたりする児童は
多くいるだろうと思われる。

○

酸性、中性、アルカリ性という言葉は知っていても、その性質や分類については理解していない。

② 何が分かればよいのか。

○

水溶液の性質について

・水溶液には、金属を変化させるものがあること。

・水溶液は３つの仲間（酸性、中性、アルカリ性）に分けられること。

・水溶液には気体が溶けているものがあること。

○

指示薬の使い方

・リトマス紙の色の変化

・リトマス紙による測定

○

実験器具の安全な使い方

・ガラス器具の扱い方

・駒込ピペットの扱い方

③ 水溶液の性質をどの順序で教えるか（最初に、どの性質を教えるか）。

＜例１＞

金属をとかす水溶液 → 水溶液の３つの仲間分け → 気体の溶けた水溶液

※ 児童の興味関心を喚起する現象に出会わせることができる。

＜例２＞

気体の溶けた水溶液 → 金属をとかす水溶液 → 水溶液の３つの仲間分け

気体の溶けた水溶液 → 水溶液の３つの仲間分け → 金属をとかす水溶液

※ ５年生の「もののとけ方」の学習から入ることができる。

＜例３＞

水溶液の３つの仲間分け → 気体の溶けた水溶液 → 金属をとかす水溶液

水溶液の３つの仲間分け → 金属をとかす水溶液 → 気体の溶けた水溶液

※ 水溶液の見分け方の基本から入ることができる。

④ ＜例１＞の学びの内容と順序は

段階	活動	学習内容
単元導入	水溶液の性質について	【水溶液の概念の復習、学習への興味付け、課題の把握】
第　１　次	水溶液と金属①	【金属を変化させる水溶液の追究】
第　１　次	水溶液と金属②	【金属を変化させる水溶液の理解】
第　２　次	水溶液の仲間分け	【酸性、中性、アルカリ性の理解】
第　３　次	水溶液に溶けているもの	【気体の溶けている水溶液の理解】
補充と発展	水溶液のふしぎをさぐる	【学びの定着、学びの深化】

⑤ 単元を構成する上で大切にしたいこと

○

「水溶液」を主語にした学習を構築する。

　　ex ：「鉄は塩酸に溶ける」ではなく「塩酸は鉄を溶かす」

○

５年生で学習した「もののとけ方」の復習を行う【単元導入】

○

自分の調べたい水溶液を持たせることでの意欲

○

確かな知識を習得する【単元全体】

　　・水溶液の性質について

　　・酸性、中性、アルカリ性について

○

実験器具操作の技能を修得させる【弟２次】

　　・駒込ピペットの使い方。

　　・リトマス紙の使い方。

○

科学的追求の思考力（と技能）を育てる【単元全体】

　　・正しく記録しまとめられるか？

　　・見えない物を推論する力

　　・水溶液を性質から多面的に追求する力

○

学習したことを確かめさせる（確かなものにする）。【補充と発展】

　　・水溶液の仲間分け

　　・生活との関連を図って

３．どのように単元を流すか

【単元導入　水溶液の性質について　　　　　　　　２時間】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題

『水よう液の性質について調べてみよう』

活　　動

○ 水溶液についての確認

○ 酸性雨についての話し合い

○ 金属を変化させる水溶液の実験

評価基準

関心①

金属に薄い塩酸を加えたときの様子に興味を持ち、変化する様子を調べようとする。

技能①

水溶液やガラス器具などを使って、金属が変化する様子を調べることができる。

学習（まとめ）のポイント
○	水溶液の中には金属を変化させるものがある。
	（水溶液によって性質が違う）

・水溶液に興味を持たせるためにもここでどの水溶液を扱うかの説明はしなくてもよい。しかし塩酸系を扱うので注意は必ずしておくこと

・実験をしていく中での注意事項を確認しておく。

ガラス器具の扱い方
駒込ピペットの取り扱い
薬品の注意
使い終わった薬品と器具について

【ここで扱う薬品について】
・希釈した薄い塩酸を使う。
しかし、子供にはっきりとした反応を見せる場合は少し濃い目の塩酸を扱う方法もある

【参考】

導入の課題を３～５種類の水溶液を提示し、「水溶液を見分けるにはどうしたらよいだろう」という課題から入る方法も考えられる。その場合、第１次、第２次、第３次の順序も変わってくることもある。

【第１次　水よう液と金属　　　　　　　　　　　　４時間】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題①

『水よう液に溶けた金属はどうなったのだろう』

活　　動

○ 溶けた金属のゆくえについての話し合い（予想）

○ 実験１　＜とけた金属のゆくえ＞

○ 溶けた金属のゆくえについての話し合い

評価基準

思考①

水溶液には金属を質的に変化させるものがあると考えることができる。

技能②

薄い塩酸や加熱器具などを使って、溶けた金属の行方を調べ、記録することができる。

学習（まとめ）のポイント
○	水溶液に入れた金属が変化を起こした場合、別の金属（もの）になっている。

・仮説をもって話し合わせ、その仮説を証明するための実験方法についても話し合わせる。
・蒸発皿の扱い（やけど）とともに飛び散ることもあるので離れることも注意しておく。
安全めがねを使うとよい。
・蒸発皿に残った粉（塩化アルミニウム）をもう一度、塩酸の中に入れてみる。【演示でよい】
・既習事項の食塩水などとの違いを明確にしておくと良い。

課　　題②

『金属に水溶液を加えるとどうなるのだろう』

活　　動

○ 金属を変化させるかどうかの話し合い（予想）

○ 実験２　＜金属をとかす水溶液＞

○ 結果についての話し合い

評価基準

技能③

水溶液と金属との反応を調べ、記録することができる。

知識①

水溶液には、金属を変化させるものがあることが分かる。

学習（まとめ）のポイント
○	水溶液によって溶かす金属に違いがある。
○	水溶液によっては変化させることのない水溶液がある。
◎	金属を入れることで、水溶液の性質を調べることができる。

用意する水溶液は　①薄い塩酸　②薄い水酸化ナトリウム水溶液　③食塩水
・化学変化の際に起こる温度変化に気付かせたい。
・少し濃い目の薄い塩酸で行うと見た目が分かりやすい。
・水素の爆発事故に注意！（実験中に、火を近づけてはいけない。）

【喚起：火の元注意】
※この時間より複数の水溶液を扱うことになる。この時、水溶液を混ぜることで有害なガスが発生することもあるので注意！

【第２次　水溶液の仲間分け　　　　　　　　　２時間＋α】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題

『水よう液はどんな仲間に分けられるのだろう』

活　　動

○ 水溶液を見分ける方法の話し合い

○ リトマス紙の操作練習

○ 実験３　＜リトマス紙の色の変化＞

○ 結果についての話し合い・交流

発　　展

○ 実験３－２　【ムラサキキャベツの汁】

○ 結果についての話し合い

評価基準

技能④

リトマス紙などを使って、水溶液の性質を調べ、まとめることができる。

知識②

水溶液は、３つの仲間に分けられることがわかる。

学習（まとめ）のポイント
◎	水溶液は、酸性と中性とアルカリ性に分けられる。
○	リトマス紙の色の変化

・区別する方法（色、におい、蒸発など）を話し合わせた後で、水溶液の性質を調べる方法の一つにリトマス紙を使って調べる方法があることを知らせる。
・子どもの意欲を高めるためにそれぞれが調べてみたい水溶液を作らせるとよい。（ケチャップなど･･･反応のわかりにくいものもあるので、事前実験が必要になる）
・リトマス紙についての説明(＜身の回りの水溶液の調べ方＞)を行うことでムラサキキャベツでの実験につながる。

※	ここでは、リトマス紙の使い方の習熟に焦点を当て、ムラサキキャベツは単元最後の発展で扱う方法もある。

【第３次　水溶液にとけているもの　　　　　　２時間＋α】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

活　　動	３種類の水溶液（食塩水、炭酸水、希塩酸）の蒸発

課　　題①	『あとに何も残らない水溶液には、何が溶けているのだろうか』

活　　動	○ 炭酸水には何が溶けているかの話し合い
	○ 実験４－１　＜炭酸水に溶けているもの＞
	○ 結果についての話し合い・交流

評価基準	思考②	いろいろな水溶液を蒸発させたことから、気体が溶けている水溶液があると考えている。

・炭酸水の様子（泡など）から何が溶けているのかを予想させ、その気体の集め方や調べ方は自分なりの方法を工夫させたい。

課　　題②

『二酸化炭素が水に溶けるかどうか、確かめよう』

活　　動

○ 炭酸水に溶けていた気体の確認

○ 実験４－２　＜二酸化炭素を水に溶かす＞

評価基準

関心②

水溶液の性質やはたらきの学習結果をうけて、酸性雨など身の回りの水溶液を見直す態度が育っている。

知識③

水溶液には、気体が溶けているものがあることが分かる。

学習（まとめ）のポイント
◎	水溶液には、気体が溶けているものがある。

・この実験４－２に関しては、実験４－１の実験方法を子供とじっくり考えるならば演示実験も可。

『酸性雨』には何が溶けているのか、など、身の回りの水溶液についても投げかけておきたい。

【補充と発展　水溶液の性質　　　　　　　　　　　　　　】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題　　(補充)	『薄い塩酸、食塩水、石灰水の　　　　　　　　　　　　見分け方をまとめよう』

活　　動	○ 見分け方の話し合い
	○ 実験
	○ 調べたことの話し合い

評価基準	思考①②の補充
	技能④の補充

課　　題　　(発展)	『身の回りの植物の汁が、酸性、中性、アルカリ性でどんな色になるか調べてみよう』

活　　動	○ 取り出し植物の話し合い
	○ 植物の汁を取る活動
	○ 実験　＜ムラサキキャベツの汁＞
	○ 調べたことの話し合い

評価基準	関心②の発展
	知識②の発展
	技能④の発展

・補充と発展は選択させる。
・補充を重視し、全児童の課題としても良い。