理科教材ワンポイント講座
  「 流れる水のはたらき 」
      流水実験をベニヤ板で
      上流・下流と川原の石
≪改訂ポイントと指導の工夫のポイント≫
22年度から扱う新規の内容として、「川の上流・下流と川原の石」が追加されている。 川の様子や川原の原石の形を、流水のはたらきと関連付けながら指導する必要がある。

土を盛って川のモデル実験を行う代わりに、ベニヤ板を用いてモデル実験を行うことで、作業の負担を減らし、繰り返し実験できるなどの利点をいかして指導を行いたい。
 
● 単元の目標
川や地面を流れる水の様子を観察して、流れる水には地面を削ったり、石や土を運んだり積もらせたりするはたらきがあることや、 川の上流と下流によって、川原の石の大きさや形が違う事をとらえられるようにする。また、大雨などで水の速さや量が増えると、災害が起こることがあることもとらえるようにする。
 
● 学習指導要領より
C−(2) 地面を流れる水や川の様子を観察し、流れる水の速さや量によるはたらきの違いを調べ、 流れる水のはたらきと土地の変化についての考えを持てるようにする。
  流れる水には、土地を侵食したり、石や土などを運搬したら、堆積させたりするはたらきがあること。
雨の降り方によって、流れる水の速さや水の量が変わり、増水により土地の様子が大きく変化する場合があること。
 
B−(3) 川の上流と下流によって、川原の石の大きさや形に違いがあること。
 
2.単元を構成するにあたって
 
@ 子どもたちは・・・
 
  生活の中で、雨が降った時には水たまりができたり、運動場の端に溝が出来たりしている事を知っている。また、台風など、雨が降った際には川の水が増水し、洪水が起こることを学んでいる。
 
  4年生の社会科の学習で、武庫川の歴史について学んでおり、その中で堤防を作ったり、洪水の被害についての学習を行っている。
 
A 何が分かればよいのか。
 
  流れる水のはたらき
  ・ 地面を削り取る。(浸食作用)
・ 削った土を運ぶ。(運搬作用)
・ 運んだ土を積もらせる。(堆積作用)
・ 水の流れの曲がっているところの水の速さや侵食の差
 
  川の流れとそのはたらき
  ・ 川の流れは侵食・運搬・堆積作用を通し、長い年月をかけて地形を作っていること。
・ 侵食・運搬・堆積作用は水の量や速さによってその大きさが異なること。
・ 上流・中流・下流の違い
・ 川の外側と内側の違い
・ 石の形や大きさの変化
・ 災害について(水害)
 
 
B 教科書の学びの内容と順序
段 階 活  動 学 習 内 容
単元導入 流れる水のはたらき 【課題の設定】
第 1 次 地面を流れる水 【侵食・運搬・堆積作用の追及】
第 2 次 川の流れとそのはたらき 【上流・中流・下流の研究と理解】
(追) 山の中、平地、海の近くでは、川の様子や、川原の石や砂の様子はどのように変化しているか。
第 3 次 川とわたしたちのくらし 【流れる水と災害と関連の追求と理解】
発展・補充 学習した事をまとめよう 【学びの定着,学びの深化】
 
3.どのように単元を流すか
 
【単元導入 流れる水のはたらき 1h】
課題、活動、まとめ など 留意点 など 評価規準
課  題 『大雨のとき、その前後の川の変化について』
 
活  動 ○ 大雨が降った時の川の様子の話し合い
  ○ 大雨の前後の違いの観察(気づき)
学習(まとめ)のポイント
水の濁りや小石の変化など、着目点を明確にする。
【確認事項】
雨水が集まって川の流れが出来ること
普段の川と大雨の川の違い
大雨の前後の違い
子ども達の知っていることと結びつけながら問題意識をもたせるようにしたい。
関心@
川のようすに興味をもち、川の流れや川原、川岸などを調べようとする。
 
【第1次 地面を流れる水 3h】
課題、活動、まとめ など 留意点 など 評価基準
課題 『雨水が地面を流れる様子を観察しよう。』
 
活動 雨あがりの地面に見られる筋についての話し合い
 
  観察1
  流れる水のはたらきについての話し合い(予想)
 
学習(まとめ)のポイント
水の流れた筋には曲がっているものがあること
外側と内側の違いに着目させておくこと
土が削られているところとたまっているところ
 
課題 『流れる水にはどんなはたらきがあるのかな』
 
活動 流れる水と地面のようすの調べ方についての話し合い(予想)
 
  実験1(教科書p5)
 
  流れる水のはたらきについての話し合い(結果)
 
学習(まとめ)のポイント
侵食,運搬,堆積のはたらきをおさえる。
【確認事項】
あらかじめ、校庭(近くの公園など)で観察できるところを探しておく。
水のはたらきを調べる活動につなげるために水の流れが曲がっているところ、水の速さ、土の残り方の違いなどに着目させるようにする。
 
【他の展開例として】
@ 水の流れのでき方
  ・ 堆積作用の確認
A 水の道筋を作っての実験
  ・ 運搬作用の確認
B 水の道筋の曲がり角の実験
  ・ 侵食作用の確認
 
調べる条件やどんなところを観察するか押さえておく。
 
侵食,運搬,堆積のはたらきそれぞれの観察場所の変化を通じて押さえるようにする。
思考@
流れる水にはどのようなはたらきがあるかを、予想する。
 
思考A
流れる水は、地面を削ったり、土を運んだり積もらせたりするはたらきがあると見出すことができる。
 
技能@
水の流れを作って、流れるみずのはたらきと地面の変化を調べ、記録する事ができる。
 
【第2次 川の流れとそのはたらき 3h】
課題、活動、まとめ など 留意点 など  
課題
『実際の川の様子はどうなっているのだろうか』
 
活動 準備についての話し合い
  川の流れをたどって流れる様子や川岸の様子を調べよう。
  観察して気づいたことの話し合い
 
学習(まとめ)のポイント
みずのはたらきと同じはたらきが川の中にもある。
石が流されていく事で、石の形が変化し
【確認事項】
観察に行く場合には注意をおこたらないこと。
観察に行く事が難しいので、映像試料や図鑑、インターネットを利用した学習が必要になる。
  最低でも教科書の挿絵を効果的に活用する事が必要となる。
思考B
川の流れは、川原や川岸の様子を変化させるはたらきがあると考えることができる。
技能A
川での観察の準備をして、近くの川の様子を調べ、記録する事ができる。
知識@
流れる水には、土を削ったり、石や土などを運んだり積もらせたりするはたらきがあることがわかる。
 
【第2次 川の流れとそのはたらき P.7〜11 1h】
●上流と下流の川原の石
課題、活動、まとめ など 留意点 など 評価規準
課題 『上流と下流の違いを調べよう 』
 
活動 ◇川の様子の2枚の写真を提示
 
『何が写っていますか?』『どこが違いますか?』
『どちらが上流でしょうか?』→『なぜ?』
『どちらが下流でしょうか?』→『なぜ?』
  → 流水の3作用を押さえる
 
  ◇石の形の2枚の写真を提示
 
『どこが違いますか?』
『どちらが上流でしょうか?』→『なぜ?』
 
  ◇違いを表にまとめさせる。
 
教科書の写真や、地域の川の資料・動画などを用いて調べるように支援する。
観察の視点(大きさ・形、積もり方など)を確かめて、表に記入させる。
石の大きさや形の違いと流れる水のはたらきを関係づけた発言に注目させる。
思考
川の上流と下流によって、川のはたらきに違いがあることが分かる。
 
知識
川の上流と下流によって、川原の石の大きさや形に違いがあることが分かる。
まとめ
・川の上流と下流では、川原の大きさや形に違いがある。
川 の 上 流 川 の 下 流
川幅が狭くて、流れが速い。
石が大きくて、角張っている。
流れる水の、けずったり、おし流したりするはたらきが大きい。
川幅が広くて、流れはゆるやか。
石が小さくて、丸みがある。
流れる水の、積もらせるはたらきが大きい。
 
【第3次 川とわたしたちのくらし 1h】
課題、活動、まとめ など 留意点 など 評価基準
課題 『流れるみずのはたらきで起こる災害を防ぐために、どのような工夫がされているのだろうか』
 
活動 流れる水のはたらきで起こる災害について
  災害とそれを防ぐ工夫について調べる。
  川とわたしたちの暮らしとのかかわりについて話し合い
  砂防ダム実験
 
学習(まとめ)のポイント
流れる水のはたらきと災害とのつながり
災害を防ぐ工夫として・・・
  @ 川岸が削られるのを防ぐ堤防
A 川底が削られるのを防ぐ堤防
B 環境に配慮した堤防
【確認事項】
話を進める段階で、水のはたらきを復習し、その力が増大になった時にどんなことが起こるのかから進めるとよい。
 
調べるのはインターネット、図鑑などを利用する。
 
技能B
流れる水のはたらきと災害との関係を調べることができる。
 
知識A
大雨が降って、水の量が多くなり、流れが速くなると、知面の様子が大きく変化したり、災害がおこったりすることがわかる。
 
【補充と発展@ 流れる水のはたらき】
課題、活動、まとめ など 留意点 など 評価基準
課題(補充) 『流れる水にはどんなはたらきがあったかな』
 
活動 流れる水のはたらきについての話し合い
  流れる水のはたらきについてのまとめ
 
課題(発展) 『川の水は、しばらく雨が降らなくても、かれることはない。どうしてか、調べてみよう。』
 
活動 川の水がかれない理由についての調べ学習
  調べた事のまとめ
パソコンや図書室の利用
思考
Aの補充
知識@の補充
 
関心@の発展
思考Bの発展
知識Bの発展