理科教材ワンポイント講座　４年　ヒトの体のつくりと運動

１．改訂のポイント

①	基礎的・基本的な知識・技能の定着のため、科学の基本的な見方や概念（「エネルギー」、「粒子」、「生命」、「地球」）を柱にして、小・中学校を通じての内容に一貫性を持たせたこと。
②	児童の学び方の特性や二つの分野で構成される中学校との接続を考え、従来の３区分（Ａ　生物とその環境／Ｃ　地球と宇宙　Ｂ　物質とエネルギー）から２区分（Ａ　物質・エネルギー　Ｂ　生命・地球）へと内容が再構成されたこと。

（新旧対照表）

現行

改訂後

Ａ（１）季節と生物

　　ア　動物の活動と季節とのかかわり

　　イ　植物の成長と季節とのかかわり

Ｃ（２）水のすがた

　　ア　水の三態変化

　　イ　水の自然蒸発と結露

Ｂ（１）ヒトの体のつくりと運動

　　ア　骨と筋肉

　　イ　骨と筋肉の働き

　　　　（関節の働きを含む）

Ｂ（２）季節と植物

　　ア　動物の活動と季節とのかかわり

　　イ　植物の成長と季節とのかかわり

Ｂ（３）天気の様子

　　ア　天気による１日の気温の変化

　　　　（現行５年から）

　　イ　水の自然蒸発と結露

新しく４学年に追加された「ヒトの体のつくりと運動」は、（Ｂ　生命・地球）の区分に入ります。

本内容は第３学年の「Ｂ（１）昆虫と植物」の学習を踏まえ、「生命」についての基本的な見方や概念を柱とした「生命の構造と機能」にかかわるものであり、第６学年「Ｂ（１）人の体のつくりと働き」の学習へつながる単元となっています。

国際的な通用性、内容の系統性確保の観点より、今回追加されることとなりました。

２．単元の目標

　　Ｂ　生命・地球

　　（１）ヒトの体のつくりと運動

	人や他の体の動物の体の動きを観察したり資料を活用したりして、骨や筋肉の動きを調べ、人の体のつくりと運動のかかわりについての考えを持つことができるようにする。
	ア　人の体には骨と筋肉があること
	イ　人が体を動かすことができるのは、骨、筋肉の働きによること

　　（内容の取扱い）

　　（２）内容の「Ｂ　生命・地球」の（１）のイについては、関節の働きを扱うものとする。

２．この単元で身に付けさせたい力

① 子供たちは・・

○

子どもたちは、「骨」や「筋肉」という言葉を普段の生活の中で使っており、なんとなく知っています。しかし、「骨」も「筋肉」も目に見えるわけではありません。そのため、「骨」や「筋肉」が体の中でどのように動き、どのような働きをしているかについては、はっきりと理解できていません。

○

そこで、目にみえない体の不思議について興味・関心を持たせ、自分の体や映像、模型などを使った体験的活動を通して、実感させながら学ばせて確かな知識へとつなげてやることが必要です。

② 何が分かればよいのか。

○

ヒトの体には「骨」や「筋肉」があること

　▼ヒトの体には固い部分（骨）と柔やわらかい部分（筋肉）がある。

　▼ 「骨」の役割

　　・骨は体をささえ、体を動かす働きがある。

　　・骨は体の中のやわらかい器官を守る役割もある。

○

関節の動きやしくみ

　▼体には曲げられるところ（関節）がある。

　▼ 関節の位置・働き

　　・関節は骨と骨のつなぎめである。

　　・関節で体を曲げることによって体を動かしている。

○

「筋肉」の働き

　▼ 筋肉が収縮することによって体を動かすことができる。

　　・腕を曲げたり伸ばしたりすると筋肉も縮んだり伸びたりする。

　　・体に力を入れたとき、筋肉は固くなる。

③ 教科書の学習内容と順序

段階	課題	学習内容
単元導入	ヒトの身体のつくりと運動	体のつくりの追究
第　１　次	ほねと関節	骨・関節の位置や働きの追究と理解
第　２　次	ほねときん肉①	骨・筋肉の働きの追究と理解
第　２　次	ほねときん肉②	動物の体の仕組みの追究と理解・ヒトとの比較
ま　と　め	まとめ	学習のまとめ

３．単元を構成するにあたって

○

あたりまえに感じている体の不思議に気づかせる（導入の工夫）

▼

体育や休み時間に体を動かしたときのことを想起させ、友だちや自分の体の動きを観察させる。

　　　　　　→　「体のつくり」を調べることへの意欲を高める。

▼

体の曲がるところを固定し、運動してみる。（ロボット体験）

　　　　　　→　関節の動きによって運動できることの実感。

▼

最初に腕や足の模型を作ってみる。

　　　　　　→　その後の学習で確かめることで、確かな知識へと結びつく。

○

正確な知識を持たせる。

▼

「骨」「筋肉」「関節」の名称や役割

→　「骨」	...	体の固い部分。体をささえ、体の中の器官を守っている。
→　「筋肉」	...	体のやわらかい部分。筋肉が伸びたり縮んだりすることで体を動かすことができる。
→　「関節」	...	体の曲げられるところで、骨と骨のつなぎめ。関節が曲がることで体を動かすことができる。

▼

「骨」や「関節」の位置、動きの違いなどをおさえることも必要。

○

「ものづくり」を通して体感的に実感させる。

▼

体に触れたり観察したりして、腕や足の模型を実際に作ってみる。

→子ども達は試行錯誤しながら模型を作ることで、体のつくりや働きについて実感し、理解を深めることができる。

○

動物の体の仕組みや動きを知る。

▼

写真やＶＴＲ、ホームページなどの活用をする。

→観察したことと比べることにより、より理解が深まる。

▼

ヒトと共通する点、違う点の比較。

・動物にも「骨」「筋肉」「関節」があること。

・「骨格」などの違いから、それぞれの動物の運動の仕方に違いがでること。

○

生命を尊重する態度を育てる。

▼

ヒトや動物の体のしくみや運動のしかたを学びながら、生命あるものを愛護し慈しむ態度を育てる。

<出典・参考資料>

○小学校学習指導要領

○小学校学習指導要領解説　理科編

○平成２０年（２００８年）告示学習指導要領小学校理科　啓林館

○小学校　新学習指導要領の授業　理科　実践事例集　３・４年　小学館

○東洋館出版社　「理科新内容の授業展開－移行措置対応－」

○学研　２０１１年新学習指導要領に対応「小４　理科授業」

４．どのように単元を流すか

『ヒトの体のつくりと運動』

単元導入

１時間　平成２１年度用　補助教材 P.8～9

ヒトの体のつくりに興味をもち、運動とのかかわりを調べようとする(関①)

授業の流れ（課題、活動内容、まとめ　など）

指導のポイント、留意点

導入
「わたしたちは、運動をするとき、体をどのように使って動いているかな」
・	ひざを曲げてとんでいる
・	ける時は、足を伸ばしている。早く動かそうとしている。
・	ラケットをふるときはひじを曲げたりのばしたりしている。

・	体育の時間や休み時間に運動した時のことを思い出したり、教科書の写真、VTR、友だちの動きを観察させたりしながら、「体のつくり」を調べることへの意欲を高める。
・	身体に障害を持っている児童に対しては、指導の際に配慮する。

課題
「自分のうでや手をさわったり、動かしたりして、体のつくりについて、考えてみよう。」

活動①＜話し合い＞
「うでや手はどんなつくりをしているのかな」
・	うでにはやわらかい肉の中にかたい骨があるよ。
・	うでを動かすと、肉がふくれたり、大きくなったり、かたくなったりするね。
・	手には曲げられるところがたくさんあったよ。

活動②＜記録＞
「うでや手について気づいたことを書いておこう」
・	力を入れると、肉がかたくなる。
・	どの指にも曲げられるところが３カ所あった。
・

・	「体のつくり」を「体の中の仕組み」というように分かりやすく説明するとよい。

・	２人１組や学習班で意見交換するとよい。
・	調べるときは、体に無理な力を加えたり、曲げたりしないように注意する。


・	肩や手首は回せる。
・	ひじや指は曲げられる。
・	気づいたことを記録カードに絵や文で書かせる。

考察＜まとめ＞のポイント

○うでや手にはかたいところややわらかいところがある。

○曲げられるところ、曲げられないところがある。

『ほねと関節』

第１次

１時間（２時間使ってもよい）　平成２１年度用　補助教材 P.10～12

ヒトの体のつくりと動きを調べ、関節をまたいだ骨や筋肉の動きと関連づけて考えることができる。（思①）
自分の体や資料をもとに、関節のあるところを調べ、観察・記録することができる（技①）
ヒトの体には骨と筋肉があり、関節は、骨と骨のつなぎ目であることがわかる。（知①）

授業の流れ（課題、活動内容、まとめ　など）

指導のポイント、留意点

導入＜話し合い－前時のふり返り－＞
「自分のうでや手をさわったり、動かしたりして気づいたことはなんだろう」
・	うでにはやわらかい肉の中にかたい骨があるよ。
・	うでを動かすと、肉がふくれたり、大きくなったり、かたくなったりするね。
・	手には曲げられるところがたくさんあったよ。
◎まとめのポイント

・	前時にまとめた「気づき」を生かして活発に話し合わせ、筋肉や関節への関心を高め、次の観察につなげる。
・	「筋肉」、「関節」、「ほね」についておさえる。

課題
「曲げられるところは、体のどんな部分だろうか」
<<予想>>
・	手や足にはたくさん関節がある。
・	手には曲げられるところがたくさんあったよ

活動①＜観察＞
「体の曲げられるところを記録カードに●をつけよう。」
・	背骨にも関節があった。
・	一本の骨の途中に関節はないよ。

活動②＜話し合い＞
「関節は、体のどんな部分だといえるかな。」
・	関節は、骨と骨のつなぎ目にあるよ。
・	足や手のように、よく動くところは、関節がたくさんあるよ。
・	背骨のように、あまり曲がらない部分にも、関節があったよ。

・	すぐに関節探しを始めるのではなく、どのような場所に関節があるのか、しっかりと予想させる。


・	人体模型が少ない場合は、補助教材や図鑑を使ったり、自分の体に触ったりして、確かめるようにする。


・	関節のあるところだけでなく、骨の動き方の違い（まげられる、回せる、等）も知らせる。
・	補助教材p.10「腕のつくり」の図を詳しく紹介することで、模型では観察できないところをおさえるとよい。

考察＜まとめ＞のポイント

○関節はほねとほねのつなぎ目である。

○手や足にはたくさん関節がある。

『ほねときん肉』

第２次

１時間　平成２１年度用　補助教材 P.13～14

ヒトの体は、骨についている筋肉を縮めたり、緩めたりすることで動かすことができることがわかる（知②）

授業の流れ（課題、活動内容、まとめ　など）

指導のポイント、留意点

導入
「ほねと関節があってもうでは動かない。うではどのようにすると動くのだろう。」
・	うでの筋肉は、ひじの関節をまたいで２本のほねについていたよ。

・	骨格模型の腕の部分などを見せ、ほねと関節だけでは動かないことがとらえられるようにする。

課題
「体を動かすとき、きん肉はどのようなはたらきをするのだろうか。」

活動①＜観察＞
「うでを曲げたり、伸ばしたりしたときのきん肉の様子を調べよう。」
・	筋肉が縮んだり、伸びたりしているよ。
・	全部が一緒に縮むわけではないね。

活動②＜観察＞
「重いものを持ったときのきん肉の様子を調べよう。」
・	腕を曲げたとき、内側の筋肉が力こぶになっていた。
・	力こぶの筋肉がとてもかたくなっているね。

活動③＜話し合い＞
「きん肉のようすからわかることは何だろう。」
・	重たい物を持ったとき、筋肉はかたくなった。
・	筋肉の内側はふくらんだ。
・	どの関節でも、同じような仕組みになっているのかな。




・	実際に自分の腕を使って確かめる。半袖のシャツを着用すると観察しやすい。


・	手さげ袋に、水の入った２Ｌのペットボトルを入れた物をもたせると良い。


・	わかったことを、記録カードにしっかりと記録させる。
・	学習のまとめ（もしくは導入）として、腕の筋肉の模型を作らせると、知識定着につながる。

考察＜まとめ＞のポイント

○ うでを曲げると、内側のきん肉はふくらみ、外側のきん肉はゆるむ。（伸ばすとその逆になる）

○重いものを持ったとき、きん肉はかたくなる。

○ほねについているきん肉を縮めたり、ゆるめたりすることで体を動かすことができる。

『ほねときん肉』

第２次

１時間　平成２１年度用　補助教材 P.15

動物の体のつくりや体を動かす様子をヒトと比較して調べた結果から、骨と筋肉のはたらきを関係づけて考えることができる。（思②）

授業の流れ（課題、活動内容、まとめ　など）

指導のポイント、留意点

導入
「ヒト以外の動物にも、ほねや関節、きん肉はあるのかな。」
・	他の動物も走ったり、とんだりすることができるからほねやきん肉があると思う。

・	補助教材のウサギの写真を見せながら、動物の体のつくりへの問題意識が高まるようにする。

課題
「ほかの動物も、ヒトと同じしくみで体を動かしているのだろうか。」

活動①＜観察＞
「実際に動物をさわって調べてみよう。」
・	ウサギにも骨や筋肉があるよ。
・	腕や足の関節はヒトと似ているね。
・	魚にも骨がある。食べるところは筋肉かな。

活動②＜観察＞
「図かんやコンピューターで、動物のほね、きん肉、関節などを調べよう。」
・	ヒトも他の動物もほねや筋肉の付き方は似ているね。
・	ウサギの足は筋肉が大きくて、飛び跳ねるのに都合がよくできているね。

活動③＜話し合い＞
「わかったことについて話し合おう。」
・	ウサギの骨はかたく、筋肉はやわらかかった。
・	ヒトとほかの動物では、手や足の骨の形が少し違った。

・	直接手で触れて調べるのが難しい場合は、走っている動物の映像を見せるとよい。
・	動物アレルギーの子へは要配慮。

・	飼育している動物でも、触り方によっては暴れたりかんだりすることがあるので、注意が必要。


・	NHKデジタル教材や理科ねっとわーくなどのデジタルコンテンツを資料とし、実際に触って観察したこととを比べることにより、理解を深めることができる。


・	動物以外にも、ヒト型ロボットやパワーショベルなどと比較させることで、ヒトとの共通点を探すこともできる。

考察＜まとめ＞のポイント

○ヒト以外の動物にも、ほね、関節、筋肉がある。

○ほね、関節、筋肉が体をささえたり、動かしたりしている。

○ 体には、かたくてじょうぶなほねとやわらかいきん肉がある。

○ 曲げられるところを関節という。

＜ほねの役割＞

○ほねは体を動かしたり支えたりする働きをもつ。

○ほねはからだのやわらかいところを守っている。