理科教材ワンポイント講座　３年　太陽の光で調べよう（２）「あたたかさと太陽の光」

①学習指導要領より（改訂前）

Ｂ　物質とエネルギー

（１）鏡などを使い、光の進み方や物に光が当たったときの明るさや暖かさを調べ、光の性質についての考え方をもつようにする。
	ア　日光は集めたり反射させたりできること。
	イ　物に日光を当てると、物の明るさや暖かさが変わること。

Ｃ　地球と宇宙

（１）日陰の位置の変化や、日なたと日陰の地面の様子を調べ、太陽と地面の様子との関係についての考えをもつようにする。
	イ　地面は太陽によって暖められ、日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあること。

＊学習指導要領を読み解くと、啓林館版教科書の本単元『かげのでき方と太陽の光』と次単元『あたたかさと太陽の光』には、
　それぞれＢ区分とＣ区分が混在していることがわかります。

新学習指導要領ではこうなる!？　<平成20年（2008年）告示>

Ａ　物質・エネルギー

	（３）光の性質	鏡などを使い、光の進み方や物に光が当たったときの明るさや暖かさを調べ、光の性質についての考え方をもつことができるようにする。
	ア　日光は集めたり反射させたりできること。
	イ　物に日光を当てると、物の明るさや暖かさが変わること。

B　　生命・地球

	（３）太陽と地面の様子	日陰の位置の変化や、日なたと日陰の地面の様子を調べ、太陽と地面の様子との関係についての考えをもつことができるようにする。
	イ　地面は太陽によって暖められ、日なたと日陰では地面の暖かさや湿り気に違いがあること。

＊内容についての大きな変更はほとんどありません。内容の取り扱いでは、（３）内容の「Ｂ生命・地球」の（３）のアの「太陽の動き」については、太陽が東から南を通って西に動くことを取り扱うものとする。また、太陽の動きを調べるときの方位は東，西，南，北を扱うものとする。とある。

② 単元の目標

　　日なたと日かげの地面のようすや温度を比較することから、太陽の光によって地面があたためられているという見方や考え方を養うようにする。また、鏡などで日光を集めたり反射させたりしてものに当てると、その明るさやあたたかさが変わることをとらえることができるようにする。

２．単元を構成するにあたって

① 子どもたちは・・・、

○

日なたの地面は日かげに比べて暖かいことは、生活経験として知っている。

	▼子どもたちが学習内容を知っている→観察する意欲を引きだす導入の工夫。
	例：日なたと日かげの地面の土を当てるゲームから導入　　　　　「暖かさ」「湿り気」の観点を抽出する。
	▼知識先行で単元を進めてしまわぬよう、観察することのおもしろさを大切に。

○

平面鏡ではね返した日光の性質

	▼前単元の導入（まと当て遊び）で、「はね返した日光を重ねると明るくなる経験」はしている。
	▼温度が高まることは生活経験としては持っていない。

② 何が分かればよいのか。

○

地面は太陽エネルギーによって暖められていること。

	▼日なたと日かげの比較
	・温度の違い
	・湿度の違い
	・照度の違い

○

平面鏡ではね返した日光の性質

	▼鏡ではね返した日光でも、ものを暖めることができる。
	▼鏡の枚数を増やせば、より暖かくなる。
	▼鏡の枚数を増やせば、より明るくなる。

○

虫眼鏡で集めた日光の性質

▼虫眼鏡は日光を集めることができ、ものをより暖めためたり、より明るくすることができる。

○

実験用具の使い方

▼温度計の使い方。

③ 学びの内容と順序は

段階	活動	学習内容
単元導入	あたたかさと太陽の光	【課題設定・日なたと日かげの地面の様子の違い】
第　１　次	日なたと日かげの地面の温度	【温度比較の追及と理解、温度計の取り扱い方】
第　２　次	あたたかさと明るさ①	【鏡で反射させた日光の性質の追求と理解】
第　２　次	あたたかさと明るさ②	【虫眼鏡で集めた日光の性質の追求と理解】
まとめ	まとめ	【学習のまとめ】
補充と発展	色による、暖まり方の違い	【学びの発展】

④ 単元を構成する上で大切にしたいこと

○	「日なたと日かげの違い」に関心を持たせる。	【単元導入】
	・明るい－暗い　　・暖かい－寒い　　・乾いている－湿っている
○	確かな知識を習得する。	【単元全体】
	▼「日なたと日かげ」の違い→温度を測定。さわって温度の違いを確認。
	▼「鏡で反射させた光」の性質→鏡で光を重ねたら、明るくなり温度も上がる。
	▼「虫眼鏡で集めた光」の性質→虫眼鏡で光を集めたら、明るくなり温度も上がる。
○	実験用具操作の技能を習得させる。	【単元全体】
	▼温度計の使い方。
	＊初めて温度計を使うので、使い方はきちんと指導する。
○	科学的追究の思考力（と技能）を育てる。	【単元全体】
	▼「太陽の光によって地面が暖められている」という見方、考え方。
	▼「日なたと日かげ」の違いを、温度・湿度・照度などの観点から、科学的に比較分析。
	▼「鏡で重ねた日光」の性質を、温度・湿度・照度などの観点から、科学的に比較分析。
○	学習したことを確かめさせる。（確かなものにする。）	【補充と発展】
	▼日光が当たったときのものの温まり方は、色によって違いがあることの理解。
	＊白よりも黒の方が温まりやすい。

３．単元の指導案

【単元導入　日なたと日かげの地面の様子　　１時間】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題

『日なたと日かげの地面の様子の違いは何だろう。』

　　・明るさの違い。

　　・暖かさの違い。

　　・湿り具合の違い。

活　　動

「日なたと日かげの地面の違いを調べよう。」

考察（結果→まとめ）

評価基準

関心①

日なたと日かげの地面のようすに興味を持ち、地面のようすを調べようとする。

学習（まとめ）のポイント
○	日なたは暖かく、日かげは冷たい感じがする。
○	日かげの土は湿った感じがする。

○	子どもたちはいろいろな観点で見つけてくるが、肯定していく中で、科学的な観点に絞っていく。
○	比較対照実験である。必ず「比べさせる」こと。（グループ分けなどで、日なたと日かげを分担させない。全員に日なたと日かげの違いを調べさせる。）

【第１次　日なたと日かげの地面の温度　　　２時間】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

課　　題

『日なたと日かげの地面はどんなところが違ったかな。』

　　・日なたは暖かく、日かげは冷たい。

　　・日なたは乾いているが、日かげは湿っている。

課題
（→予想）

『日なたと日かげでは、地面の温かさは
どれくらい違いがあるのだろう。』

活動（操作練習と準備）

「温度計の使い方を練習しよう」

活動

「日なたと日かげの地面の温度をはかろう」

考察（結果→まとめ）

評価基準

思考①

日なたと日かげの地面のようすを比較して、それらの違いを考えることができる。

技能①

温度計を使って、日なたと日かげの地面の温度を調べ、記録することができる。

知識①

地面は太陽によって暖められて、日なたと日かげでは地面の暖かさや湿り気に違いがあることが分かる。

学習（まとめ）のポイント
○	日光によって地面は暖められる

○	温度計の使い方は、必ず全員に身に付けさせる技能。
○	比較対照実験である。必ず「比べさせる」こと。（グループ分けなどで、日なたと日かげを分担させない。全員に、日なたと日かげの温度を測定させる。）
○	固い地面では測定しにくい。スコップの用意。（温度計の先で地面を掘る子どももいる。）
○	記録用紙は用意する。
○	可能であれば、１時間ごろ、午後もはかるとよい。

【第２次　あたたかさと明るさ ①　　　　　２時間】
～　実験方法を考えさせるのに適している学習場面　～

課題、活動、まとめなど

留意点　など

導　　入

『日かげの地面を温めるには、どうしたらいいだろう。』

課題
（→予想）

『鏡ではね返した日光でも、
明るさや暖かさは変わるだろうか』

　「実験方法を考えよう」

　　・壁に日光を重ねて当てて、手で触ってみよう。

　　・氷を使って、どちらが早く溶けるかを比べてみよう。

　　・温度計に日光を当てて、温度の上がり方を比べよう。

活動

「実験してみよう」

　　・日光を重ねると、とても明るいね。

　　・鏡１枚と３枚で、バターの溶け方がこんなに違うよ。

　　・思った以上に温度の差が出そうだね。

考察（結果→まとめ）

評価基準

思考②

ものに日光を当てると、ものの明るさや暖かさが変わると考えることができる。

技能②

鏡で日光を集めたときのものの明るさや暖かさを調べ、記録することができる。

学習（まとめ）のポイント
○	鏡を跳ね返した日光でも、当たったところは明るく、暖かくなる。
○	日光を重ねたときの方が、より明るく、暖かくなる。


○	その他の課題例。　『鏡ではね返した日光を重ねると明るさや暖かさはどうなるだろうか。』
	その他の課題例。　『鏡ではね返した日光を重ねると明るさや暖かさはどうなるだろうか。』
○	「明るさ」も最初から課題に入れておく。
○	チョコレートやバターを使って実験するのもよい。
○	比較対照実験である。必ず「比べさせる」こと。その他の条件は同じにしておくこと。
○	日光に当てない場合も記録しておくとよい。
○	鏡自体も暖まるのかどうか、も確認させる。（→暖まらない。）

○	明るさと暖かさを関連づける。

【第２次　あたたかさと明るさ ②　　　１時間　】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

導　　　入

『鏡の他にも日光を集めることが出来るものはないかな。』

・虫眼鏡でも集められるよ。

課題（→予想）

『虫眼鏡で日光を集めて、紙に当てよう。』

活　　　動

「実験してみよう」

　　・明るい部分が大きくなったり小さくなったりするよ。

　　・まぶしいね。

「まっすぐに進む光がまっすぐに進んでいないのかな。」

　　・まっすぐに進んでいないから明るくなるのかな。

　　・けむりが出てきたよ。

考察（結果→まとめ）

評価基準

関心②

鏡や虫眼鏡で日光を集めることに興味を持ち、ものの明るさや暖かさを調べようとする。

知識②

ものに日光を当てると、ものの明るさや暖かさが変わることが分かる。

学習（まとめ）のポイント
○	日光を小さく集めるほど、明るくなる。
○	日光を小さく集めるほど、熱くなる。煙が出る。

○	温度がかなり高くなるので、温度計は使えない。

○	焦がすこと自体を楽しんで終わってしまいがちである。直進している光を屈折させる道具が「虫眼鏡」である。それを教師は意識しておきたい。（「光を集める」という表現で。）
＜安全指導は徹底的に＞
	・人の体や服に当てない。
	・太陽を絶対に見ない。
	・むやみに焦がさない。

※　虫眼鏡で太陽を見ると、網膜が、　　取り返しの付かないことになります。

	・危険が予想される際の指導は徹底し、約束通りに実験が出来ない子どもがいる場合は、即時実験を取りやめて再度指導する。

【補充と発展の例①】

課題（→予想）
	『日光が当たったときのものの温まり方は、色によって違いがあるのかな。』

	こんな実験をしてみました。（一例）

	５本の温度計を鉄棒に吊るしています。日光が直接当たらないように、液だめには色画用紙を巻いています。（四つ切り画用紙、４分の１の大きさ。）日差しの強い夏休み中の実験だったので、結果はすぐに出ました。（単元を学習する１２月上旬では、実験にかかる時間も異なるはずです。）黒→赤→青→黄（黄）→白（白）、の順で温度が高くなりました。しかし時間をおくと、他の温度計の数値も黒に近づいていきました。

【補充と発展の例②】

課題、活動、まとめなど

留意点　など

発展課題	『ペットボトルの水を温めるには、どうしたらいいだろう。』
		・日なたに置こう。
		・鏡を使って、日光を重ねよう。
		・ペットボトルを黒い紙で包んだらどうかな。

活　　　動	「グループを作ってみよう」

○	ペットボトルは、500ｍｌがよい。
○	着色した水でも可
○	その他の課題例
○	『水を温める装置を作ってみよう。』
○	ソーラークッカーにチャレンジしてもよい。

▼ この発展課題を、単元の早い段階での課題にすることも出来る。
　　① 単元導入での課題にする方法。
　　② 【２　あたたかさと明るさ】の導入での課題にする方法。
▼どの段階で入れるにしても「ただ活動しているだけ」にならないように、「何が分かったか」
　子どもがつかめるように、学習を組むことが大切である。